デザイナーと仕事をしてきた体験を整理する|工業デザイナー編


クローズアップされた掛時計の文字盤

Last Updated on 2025年11月16日 by expwakui

前回の「序章」のなかで「プロダクトデザイナー」と書いていたのは、正確には「工業デザイナー」だったので訂正をしました。工業デザイナーはインダストリアルデザイナーとも呼ばれるそうですが、個人的にはあまり馴染みがありません。

社会人になって初めての仕事は時計(クロック)の外装設計だったので、関わったデザイナーは工業デザイナーです。

Design には「設計」の意味もありますが、日本では一般的にデザインと設計は異なる職種です。ただし建築の場合、建築デザイナーは建築士(または設計士)に含まれます。

工業デザイナーとは

工業デザイナーとは、工業製品の外観デザインを手がける専門職で、特定の量産製品のデザインを対象としています。
工業製品の見た目と使い勝手、商品としてのビジュアルをトータルにデザインする職種です。
「メーカーのデザイン部門に所属しているデザイナー」というと分かりやすいでしょうか。最近では「インハウス」という言葉もありますね。

一方「プロダクトデザイナー」は幅広い分野に関わる概念のようです。
製品のデザインを包括的に捉える職種で、量産製品以外の一点もの、おそらく個人向けのカスタムデザインまで含む考え方でしょう。デザイン事務所として独立して、さまざまな製品に関わる仕事をする「製品デザインのプロフェッショナル」といえるかもしれません。

工業デザイナーと関わった仕事の内容

私は業種の異なる2社で製品の量産設計に関わっていました。1つは時計で、もう1つは複写機(複合機)です。
どちらの会社も、製品の開発・生産に関わる部門としては大きく分けて、商品企画・デザイン・設計・生産技術・製造がありました。複写機では研究開発部門も大きな組織です。

時計(クロック)の会社の話をすると、私がいた外装設計部門と同じフロアにデザイン部門があり、そこで仕事をしている工業デザイナーとの関わりが日常的でした。デザイナーが決めたデザインにしたがって、私たちが量産設計をします。

彼らデザイナーの仕事は、商品企画の担当者とともに新しい商品の構想やラインナップを決めて、デザインを制作することです。日常的には絵を描くこととモックアップ(模型)を作ることが主な作業で、その合間に商品企画や設計・生産技術担当者との打ち合わせ、あるいはプレゼンに臨みます。

工業デザイナーと関わって感じたこと

工業デザイナーという言葉は硬いのですが、実際のデザイナーは柔らかいイメージです。外見的にカッコいい人が多いため、メーカーの社内では最も華やかな職場だろうと思います。
私は隣の職場で仕事をしながら、カッコいいなと思って眺めていました。

やわらか頑固

デザイナーの人たちは、比較的物腰が柔らかくて人当たりのいい人や、物静かな人が多いと思いました。ただ、仕事に対しては妥協をしない人が多かったかなと思います。
デザインの段階で、一応、設計のベテラン勢に相談することはあったと思いますが、基本的には自分たちの意向を強く製品に反映させようとする姿勢が印象的でした。

量産設計に着手する段階では、デザインはすでに「決定事項」であるため、量産設計するうえで難しい問題が発生した場合でも、なかなか受け入れてくれることはありません。「金型の都合でこの寸法は厳しいので、変更してくれませんか?」と申し出ると、最初の反応は「ダメ!」私から見て後輩のデザイナーでも「ええー!?やだなあ・・・」という感じです。
もちろんすべてにわたってそうではなく、デザイナーから見て譲れない寸法というのは、あるのですね。

それに、設計者は「そこを何とかする人」だと思われている部分があります。こちらも、嫌だと言われると1回持ち帰ってうまくできる方法を考えることもありました。生産技術の担当者にも相談したり、あるいは外注先の金型工場に出かけて行って社長と話したりしたこともあります。

当初、デザイナーは寸法に関してラフなイメージがありました。しかし、人にもよりますが、1mm単位あるいは誤差の話になると0.2〜0.3mm単位の攻防になります。

キャラクター商品

時計というのはほとんど見た目勝負の製品なのですね。デザイナーが絶対的に力を持っていると思います。
商品ラインナップとして、キャラクター商品があるのですが、これがまた大変なのです。

キャラクターには版権元があります。企画段階でデザインを明確にして、そこにどのようにキャラクターイメージを使うかについて、版権元と合意しなければなりません。
キャラクターそのものを形状に使うこともあります。当然、色も管理され、モックアップも版権元に確認をとります。
そういう場合の量産設計は、非常に制約が多いのです。設計・量産の都合で寸法を変えたくても、外観部分については原則として変えられません。

設計が難しいケースもありますが、それはデザイナーもおそらく同様です。デザイナーは技術面をすべて理解しているわけではないため、「えいや!」で形状や構造を決めているからです。デザインが決定してから量産設計に入るので、キャラクター商品はかなり度胸が必要だったのではないでしょうか。

デザイナーの頑固さは、コンセプトを守りたいからということだけではなく、変更によるリスクを避けたいという面があったのかもしれません。

次回は「インテリアデザイナー/コーディネーター」について

工業デザイナーについて書いているうちに、いろいろ思い出してきて書きたいことが増えそうですが、一旦ここで終わりにしておきます。
次回はインテリアデザイナーとインテリアコーディネーターについて書きます。お楽しみに。

【シリーズ投稿】デザイナーと仕事をしてきた体験を整理する
  1. 序章
  2. 工業デザイナー
  3. インテリアデザイナー/コーディネーター
  4. カラリスト
  5. 建築家
  6. Webデザイナー/グラフィックデザイナー