WordPressにブロックエディターが導入されたのは2018年12月です。それから7年ほどが経ったいま、WordPressというツールに対する私の見方も大きく変わっています。
現在のWordPressは、管理画面上でページ全体のビジュアル構成を組み立てられるだけでなく、執筆の集中モードや共同編集、リビジョン管理といったライティング環境としての機能も充実しています。次期バージョンのWordPress 7.0ではAIの導入まで予定されている状況です。
WordPressはブログ用CMSであり続けながら、Webデザインとライティングを統合した制作ツールの側面も持ちつつあります。
この記事では、WordPress制作環境の変化の全体像を整理してみます。
目次
- WordPressがWebサイト制作を完結させる時代
- フルサイト編集で変わるデザインの作り方
- WordPressのライティング環境も進化しつつある
- WordPress 7.0で始まるAI対応
- まとめ:Webサイトがワンストップで制作可能な時代に
WordPressがWebサイト制作を完結させる時代
WordPressはかつて、デザイン制作には直接関係のないツールで、HTMLやCSSの記述による構成ができなければデザイン修正ができないツールでした。
しかし、現在はコードを書かずに管理画面だけでサイトを仕上げられる環境が、着実に整ってきています。
その変化のスタートポイントと経緯を以下に解説します。
ブロックエディターが起点になった
2018年12月リリースのWordPress 5.0から、標準エディターが「ブロックエディター(Gutenberg)」に切り替わりました。
テキストや画像、見出しなどをブロック単位で管理するこの仕組みは、従来のクラシックエディターとは大きく異なります。
ドラッグ操作やクリックでブロックを自由に配置・移動でき、HTMLやCSSの知識がなくても視覚的にレイアウトを整えられます。
このブロックエディターの登場が、WordPressを「投稿・編集するツール」から「構成するツール」へと変える起点となりました。記事の投稿・編集だけでなく、固定ページや特集ページの制作、さらにはエラーページも作成可能です。
WordPressの使われ方は大きく広がっています。
CMSから「制作ツール」への拡張
WordPressはもともとブログ用コンテンツ管理システム(CMS)として普及しました。ブログやニュースサイトの記事を管理・公開するための基盤として活用されています。
さらに自由度の高いシステムであることから、コーポレートサイトやポートフォリオなど用途は広がりを見せ、現在では世界中のWebサイトで採用されています。
ただ、従来のWordPressはあくまで「コンテンツを管理・公開するツール」でした。サイト構成やビジュアルを整える「デザイン制作」と、HTML・CSSの「コーディング」による実装は別の工程として必要だったのです。
この構図を変えたのが、フルサイト編集機能の登場です。管理画面上でサイト全体のデザインを組み立てられるようになったことで、WordPressはデザイン制作の一部を直接担えるツールへと拡張されつつあります。
フルサイト編集で変わるデザインの作り方
ブロックエディターによる編集機能が拡張され、2022年1月にリリースされたWordPress 5.9でフルサイト編集が本格的に利用可能になりました。
これにより、サイトの構成をデザインできる環境が生まれています。
管理画面上でサイト全体の見た目を組み立てられるこの仕組みは、これまでデザイナーやコーダーが担っていたデザイン領域を大きく開放するものです。
フルサイト編集で変わったことを解説します。
ブロックテーマでサイト全体を編集できる
フルサイト編集を利用するには、「ブロックテーマ」と呼ばれる新しい形式のテーマに切り替える必要があります。
従来のクラシックテーマでは、サイトの骨格部分はPHPファイルで管理されており、デザインを変更するにはコードの知識が必要でした。
一方、ブロックテーマでは、サイトのすべての部分をブロックエディターで編集可能です。管理画面の「外観」>「エディター」からサイトエディターを開くと、投稿・固定ページだけでなく、テンプレートやテンプレートパーツまでビジュアルで編集できます。
ヘッダーからフッターまでノーコードで作る
クラシックテーマではヘッダーやフッターのデザインを変更するにはCSSやPHPの編集が必要でしたが、ブロックテーマでフルサイト編集機能を使うことで、すべてビジュアルで編集可能です。
ナビゲーションメニューのレイアウト変更や、フッターへのSNSリンクの追加なども、コードを書かずに管理画面上で完結できます。
WordPress 7.0ではナビゲーションブロックがさらに改善され、カスタマイズできるナビゲーションオーバーレイの導入や、モバイル向け表示のコントロールも強化される予定です。
ヘッダーからフッターまでを一元的にデザインできる環境は、専門的な知識を必要としないため、自分でサイトを仕上げたい人にとって非常に魅力的なツールとなっています。
ブロックパターンでページを素早く組み立てる
ブロックパターンとは、複数のブロックをまとめてパターン化したデザインです。
見出し・画像・テキストを組み合わせたセクションや、カード型のコンテンツ一覧など、あらかじめ用意されたレイアウトをワンクリックで挿入できます。
ページの骨格をゼロから組み立てる手間が省け、デザインの一貫性を保つのに効果的です。
ブロックパターンはWordPress標準のものに加え、使用しているテーマが独自のパターンを提供する場合もあります。デザインの選択肢が広く、差し替えや調整も直感的に行えるため、ページ制作のスピードを大幅に高められます。
コードを書けなくても、見栄えのよいページを短時間で組み立てられるのが、ブロックパターンの大きな利点です。
WordPressのライティング環境も進化しつつある
WordPressはデザイン面だけでなく、執筆環境も整ってきています。外部のライティングツールを使うことなく、管理画面上で書き始めから公開まで完結できる環境です。
具体的な機能について解説します。
執筆に集中できるモードの登場
ブロックエディターには、次のように執筆に集中できる4つの表示モードがあります。

- トップツールバー:編集用のツールバーをトップに固定する
- 集中執筆:ナビゲーションを除く編集画面を最大化する
- スポットライトモード:選択したブロック以外の本文を半透明で薄く表示する
- フルスクリーンモード:ナビゲーションを最小限にして画面を最大化する
これらの機能によって、編集画面を開いた瞬間から必要のないUIが視界に入らない状態で書き始められます。
テキストの入力に集中しやすい機能です。
リビジョンで編集履歴を管理できる
WordPressにはリビジョン機能が標準で備わっており、記事を保存するたびに変更履歴が自動的に記録されます。
過去の状態に戻したい場合は、リビジョン一覧から任意の時点を選んで復元できます。
WordPress 7.0ではこの機能がさらに強化され、ビジュアルリビジョン比較が導入される予定です。エディター上で変更箇所がハイライトされるため、新旧バージョンでのデザインやレイアウト、文章構成の違いが分かりやすくなるでしょう。
リアルタイムの共同編集が可能に(7.0以降予定)
WordPress 7.0では、複数のユーザーが同じ投稿や固定ページをリアルタイムで同時に編集できるようになる予定です。
WordPress 6.9で導入されたブロック単位のコメント・ノート機能などのコラボレーション機能が強化され、データの同期が実現し、安定性も向上するとされています。
チームでコンテンツを制作する場面では、「誰かが書いた下書きを別の人が確認・修正する」というワークフローも一般的です。この機能が本格化すれば、GoogleドキュメントやNotionのように、WordPress上でそのままチームライティングを完結させられるようになるでしょう。
WordPress 7.0で始まるAI対応
2026年4月9日にリリースが予定されていたWordPress 7.0では、「WP AIクライアント」と呼ばれる仕組みがコアに導入される予定です。ただし、リアルタイム共同編集機能の安定性向上のため、リリースは若干の延期が発表されています。(4月1日時点)
WP AIクライアントは、特定のAIサービスに依存するのではなく、さまざまなAIプロバイダーのモデルをWordPressのフレームワーク内で活用できるようにするための基盤です。
プラグインやテーマがこの仕組みを活用することで、多様なAI機能をWordPress上に展開できるようになるとされています。ただし、実際にどのような機能が利用できるようになるかは、プラグイン・テーマ側の対応状況によって異なるでしょう。
執筆補助・デザイン提案・コンテンツ最適化など、さまざまな活用が期待できますが、詳細は今後の展開を注視する必要があります。
参考:WordPress.org「WordPress 7.0 ベータ1」
まとめ:Webサイトがワンストップで制作可能な時代に
ブロックエディターの登場からフルサイト編集の普及、そしてAI対応へと続くWordPressの進化を振り返ると、一つの方向性が見えてきます。WordPressは「Webサイト制作をWordPress上で完結させる」というプラットフォームへと、着実に歩みを進めているのだと私は感じています。
かつてはデザイン制作、コーディング、ライティングは別のツールを用いて行ったうえで、WordPressに実装したり流し込んだりしていました。
チーム作業においても、外部サービスが欠かせない状況でした。
現在では、設計・デザイン・ライティング・公開までを一つの環境で担えるようになりつつあります。
汎用AIによるWebサイトの自動生成も話題になっていますが、WordPressには長年の開発で積み上げられた専用ツールとしての資産、コミュニティなどのエコシステムが存在します。
その土台の上にAIが加わることで、WordPressはこれまで以上に強力な制作環境へと発展する可能性があるでしょう。
